ドローンを活用した被災状況調査としては、以下の目的があり、目的に応じた動画撮影を行う必要がある。
発災直後の被災状況調査は、「被災箇所の発見及び被災概況を把握し、復旧優先度・被害拡大の防止策等を検討すること」を目的としている。その目的に沿ったドローンを活用した調査のうち、本書は「② 一定エリア内の被災状況の把握」「③ 被災箇所の詳細な状況把握」「④ 人家や施設等に影響を与える地山部分等における異常の把握」を対象とする。
「①全般的な被災概況の把握」は、通常は防災ヘリコプターや測量用航空機、衛星等を用いて広範囲のエリアを対象とした被災状況の把握を目的として行われる。雲が低く垂れ込めている場合や低い高度から詳細な情報を得たい場であれば、ドローンを活用した調査も考えられる。調査手法としてドローンの活用を想定しておく必要はあるが、②~④の方が主要な活用方法と考えられることから、本書では対象外とした。
「⑤ 橋梁その他の施設の異常の把握」にもドローンは、状況によっては大きな力を発揮できる可能性があるが、ドローン調査を行う場合の留意点は、それぞれの施設毎に様々であることから、本書では対象外とした。
「⑥ 道路交通状況等の詳細把握」は、一般的には車載又は携帯電話等のGPS等を通じて情報収集が行われており、ドローンによる把握実績も乏しいことから、本書では対象外とした。しかし、災害発生後の避難行動等に関する情報は常に不足しており、道路交通状況等の把握のために、ドローンの映像を活用する可能性も考慮しておくと良い。
「⑦ 地形測量(数値地形図作成、三次元点群作成)」も災害時のドローンの活用用途としては重要であるが、既存のマニュアル等が多数存在しているため、本書では対象外とした。
http://www.gsi.go.jp/common/000186712.pdf
http://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/public/uav/doc/uav_danmen_manual_170331.pdf
http://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/public/uav/doc/anzen_kijun_160330.pdf
被災状況調査は、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)との共同作業が主体となることが一般的である。その場合、ドローン撮影班は、事前にTEC-FORCE隊員と撮影目的を共有しておく必要がある。また、被災状況調査中に撮影目的が変更となったり、撮影対象物や撮影方法について要望が出される場合もあるので、TEC-FORCE隊員と連絡を密にするよう努める必要がある。
「広報」を主目的としたドローン撮影は、被災状況調査の対象外である。航空法の規定により、ドローンの飛行制限が災害時に適用外とされているのは、人命や財産に急迫した危難のおそれがある場合における、人命の危機や財産の損傷を回避するための調査であることが理由である。
そのため、被災状況を把握することを差し置いてTEC-FORCE3の活動等に焦点をあてたような映像の取得を狙うべきではない。動画の撮影は静止画の撮影と比べて、撮影意図が視聴者に明確に伝わりやすいため、撮影の目的を明確に意識しておくことが重要である(図1-2)。なお、撮影した映像を結果として広報に使用することは、推奨すべきことであり、何ら問題はない。