対象物に応じて、被災箇所が最も把握がしやすい構図で撮影するようにする。
例えば、堤防や道路などの線状構造物の場合であれば、まずは数10m程度の高度から全景映像又は真下方向の映像を撮影する。映像の見やすさの点では地平線が上部に写っているような全景映像が一般には良い。しかし、カメラアングルを下向きにすればするほどアップの映像が取得しやすくなったり多少草木があっても地表面が確認しやすくなったりするメリットもある。見通しが良く、地平線まで映った映像でも変状の有無を確認しやすい場合には地平線まで映った映像、樹木等の地表を覆う障害物が多い等により下向きの深い角度での映像が必要な場合には、下向きのアングルの映像を撮る等すると良い。また調査対象が河川であれば、真下向きの映像で河床の状況が写り込むように撮影すると、被災の原因究明に役立つ場合もある。
カメラの向きは正面向きのものが一般には見やすい。しかし、陽が射す向きや対象物の形状等によっては、水面での反射光を避けたり、注目される部分を良いアングルで撮ったりするために、側方又は後方に向けた方が良い画像が得られる場合もある。また、機種によっては、撮影する向きによって機体の写り込みのの問題も発生する。状況に応じて、適切な向きで撮影するよう努めることが望まれる。
全体的な被災状況をカバーする映像の取得ができた後には、安全を確保できる範囲でできるだけ低い高度で、被災箇所の測線沿いの近景映像を撮影することが望ましい。これにより、初回の飛行で被災状況の全体を把握し、次の飛行でより詳細な被災状況を把握することができる。
特定した被災箇所の撮影を行う場合は、全景映像(図2-16)及び近景映像(図2-17)、正面映像(図2-18)や垂直映像及び撮影が可能な被災箇所の起終点側方向からの映像の全てを撮影することが望まれる。ただし、既に(1)の調査で全景が撮影できている場合は、近景映像や正面映像の撮影に専念すれば良い。
全景映像(斜め)は、被災の規模や原因等を把握することを意識した映像とする。近景映像(斜め)や正面映像は、被災状況の詳細を把握できる映像にする。
なお、高い高度で広範囲が写るように撮影した映像の場合は、映像内の建物や自然地形等の地物が縮尺の目安として活用しやすい。それに対して、詳細な状況の把握のために行う撮影の場合は、縮尺の目安となる地物が写らない場合も多い。このため、図2-15 にあるように、別の調査員が現場に入れるような場合にはポールやスタッフ、あるいは人物(TEC-FORCE)等、目標特定のための基準物を映像に入れると効果的である。
異常箇所が特定される前の時点では、(1)の場合に準じたもの、異常箇所が特定された後は、(2)の場合に準じたカメラ構図を用いると良い。