ドローンを用いた被災状況動画撮影のポイント集

~平成28年台風10号等の経験を基に~

目次

本ポイント集の目的
  1. 利用にあたっての留意点
第1章 計画準備のポイント
  1. 1-1 常時における体制の構築
  2. 1-2 操縦者や使用機材の特性に応じた作業計画の検討
  3. 1-3 撮影目的の明確化
  4. 1-4 安全の確保
  5. 1-5 調査環境の確認
  6. 1-6 調査体制
第2章 現地調査のポイント
  1. 2-1 現地準備
  2. 2-2 飛行技術
  3. 2-2-1 対地飛行高度
  4. 2-2-2 上昇可能な高度と飛行可能な距離
  5. 2-2-3 飛行経路
  6. 2-3 撮影技術
  7. 2-3-1 カメラやジンバルの品質の確保
  8. 2-3-2 カメラアングル
  9. 2-3-3 カメラ構図
第3章 公開用映像作成のポイント
  1. 3-1 映像データの受け渡し
  2. 3-2 速やかな公開を前提としつつ、わかりやすさを重視
  3. 3-3 公開用映像の編集体制
  4. 3-4 広報用の映像
  1. 参考1 UAV活用官民協力制度に関する協定 締結先一覧
  2. 参考2 関連資料リンク集
編集協力者

第2章 現地調査のポイント

2-1 現地準備

ポイント
  • 現地調査における飛行・撮影計画については、事前にできる範囲で検討した上で、現地に入った後に得られた情報も考慮の上で定める。
  • 気象・電波条件や飛行空域の状況に応じたリスク回避方法の明確化が重要である。

ドローンを用いた被災状況調査を行うに際しては、予め定めるマニュアルに基づく準備を行うとともに、現地条件や要員・資機材の状況に合わせて、事前にできる範囲での飛行・撮影計画を検討しておく。その上で、現地に入った後に、そこで得られた情報も考慮の上、飛行・撮影計画を確定させる。

以下に示すように、様々な障害が発生する可能性に対応した影響の回避策や軽減策を考慮しておくことも飛行計画上重要である。

(1)気象条件の影響について

ドローンの運用は他の地上作業と比較して、天候等運用時の条件に様々な制約がある(図2-1)。機体性能、現地条件、操縦者の技量にもよるが、一般的には風速5m/s程度までが安全に飛行できる限界と考えられている。

しかし、緊急を要する災害時調査では、多少のリスクがあっても。調査を優先させる必要がある場面も想定される。風速が5m/sを越える場合には、第三者への被害が生じない飛行コースを選択する等、一層の安全確保策を行った上で、操縦者が自信を持って飛行させられる範囲で調査を行うと良い。

また、一度、飛行を開始した後でも、継続に不安が生じた場合には、飛行を中断する等の判断をためらわずに行うことも重要である。

事前に地形の突起や構造物・河川などの状況を把握し、局所的な風の状況をできるだけ把握するよう努める必要がある。また、一般に降雨・降雪時にはドローンは飛行できない。ただし、雨天でも飛行可能な機体が利用でき、操縦者も降雨・降雪による支障を受けずに操作できる環境を確保できる場合は、この限りではない。

このほか、雷が遠くで鳴りだす等の気象状況に応じて作業を中止する必要がある。

図2-1
図2-1 気象条件に関するリスク

※出典:東北技術事務所「UAVによる河川調査・管理への活用の手引き(案)」

(2)電波の条件

強力な磁力線が想定される電波塔、発電所、変電所等の施設の近くでドローンを飛行・操縦させると、コンパスエラーが発生する場合がある(図2-2)。

そのため、電波塔や変電所が付近にある場合、飛行前に電磁波計により電磁界強度を測定する方法がある。ただし、一般的な電磁波計では、電磁波のエネルギー量を確認できるだけで、周波数・受信レベルの測定はできない。この点、例えば、スペクトラムアナライザーや電界強度計等の使用周波数や出力及び通信状況の測定が可能な機器を使用することで、事前に操縦リスクの把握が可能である。状況が許すのであれば、専門業者へ測定を依頼するなどして、安全に飛行できる場所かどうかの判断の参考とする方法もある。

また、強い電磁波を出す施設の近くを飛行中に、操作に異常を感じた場合は、当該施設へのそれ以上の接近は、できるだけ回避する。

なお、災害時には停電等のために電波塔、発電所、変電所等の施設が稼働していない場合や送電が止まっている場合もある。災害時には、これらの施設の情報が錯綜していることも多いため、一般的にこれらの施設は通常通り稼働しているものと考えた方が良い。

このほか、災害時には、通信会社等が臨時の基地局を設ける場合もある。このような可能性にも注意を払い、関連する情報の取得に努めることが望ましい。

図2-2
図2-2 電波の影響によるドローン暴走の危険性

※出典:東北技術事務所「UAVによる河川調査・管理への活用の手引き(案)」

(3)衝突・墜落リスクの回避

災害時には、障害物や周囲の状況を把握するための事前の現地踏査ができない場合も多い。事前に現地状況を十分に把握できない場合は、安全を確保するため、目視できる範囲内でドローンを常時監視して飛行させる方法を基本にする必要がある。目視外飛行に熟達した操縦者の場合でも、電線や木の枝等に気づきにくい場合もあるため、初めて飛ばす空域では、慎重に飛行経路を確保する必要がある(図2-3)。

また、橋脚が高い橋の上から、河川護岸などの被災状況を撮影する場合、ドローンの高度が操縦者よりも低い状態で飛行させる可能性がある。多くのドローンは、通信アンテナが機体下向きについている。そのため、操縦者より低い高度で飛行した時に、通信状態が悪化し、操縦不能となる場合があることに十分注意する必要がある。

※電波利用に関する制度は、総務省ホームページ(http://www.tele.soumu.go.jp/index.htm)「ドロ ーン等に用いられる無線設備について」を参照。
図2-3 被災地の状況(障害物・墜落リスク)
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(4)他の航空機との飛行調整

大規模災害が発生した場合には、ドローンの飛行空域と、捜索、救助及び報道を目的とした航空機の飛行空域が重複する可能性が十分ある。地方整備局以外でのドローン利用も今後増大することが想定され、飛行空域の重複の可能性も増加するものと考えられる。

東北地方整備局においては、現地災害対策本部等を通じてドローンの飛行計画(日時、飛行場所など)について、関係機関と情報共有している。調整した飛行空域について、現場の操縦者等との間で情報を共有する。

一方、現場のドローン操縦者は、不意に他の航空機が接近する可能性を常に頭に入れ、航空機を確認した場合には、無人航空機を飛行させない等の回避行動を取る。

航空法第132条の3の適用を受け無人航空機を飛行させる場合の運用ガイドライン

平成27年11月17日(国空航第687号、国空機第926号)

<4.大規模災害時の飛行調整(参考)>

大規模災害が発生した場合は、捜索、救助を目的とした多数の航空機及び無人航空機が飛行することが想定される。航空機の航行の安全の確保及び無人航空機に起因する事故等の防止のため、これらの空域で無人航空機を飛行させる場合には、現地災害対策本部等を通じて無人航空機の飛行の方法(日時、飛行場所など)を調整することが望ましい。

無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン

平成30年 3月27日(国土交通省 航空局)

<3.注意事項 (2)飛行させる際には>
  • 航空機との接近又は衝突を回避するため、航空機を確認した場合には、無人航空機を飛行させないでください。
  • 他の無人航空機との接近又は衝突を回避するため、他の無人航空機を確認した場合には、飛行日時、飛行経路、飛行高度等について、他の無人航空機を飛行させる者と調整してください。
  • 国土交通省から、災害等による被災地周辺での捜索救難機の安全を確保するための飛行自粛等の要請があった際には、無人航空機の不要不急の飛行は控えてください。
(5)危険回避・不時着場所の確認

現地準備では、調査範囲、調査地点及び離陸・着陸場の確認の他、不時着や墜落を想定し、民家など「絶対に落としてはいけない場所」と「安全に降ろせる場所」を確認することが必要である。

あらかじめ空地や笹薮、葦原、樹林帯及び山の斜面など、リスクが無い、不時着が可能な場所を確認し、緊急事態に備えることが重要である。

国土交通省東北地方整備局 企画部 企画課
〒980-8602 仙台市青葉区本町三丁目3-1 仙台合同庁舎B棟 TEL 022-225-2171(代表)